よつゆ

陽炎座のよつゆのレビュー・感想・評価

陽炎座(1981年製作の映画)
3.9
鈴木清順による大正浪漫三部作、『ツィゴイネルワイゼン』に続く第二弾。

大正時代といえばエロ・グロ・ナンセンス。
そして、大正時代に明治時代からの流れを汲むロマン主義の円熟。
それらを1980年代に、大正時代それまでとは異なったメディア、カラー映画にて新たな大正浪漫を見せた。
それは、事実的な大正浪漫の投影ではなく、大正浪漫において表現された文化芸術を鈴木清順のフィルターを介してカラーフィルムで表現した。
本当にすごい。

ただ、正直前作『ツィゴイネルワイゼン』に比べると好きではなかった。
表現においては一切引けを取っていないが、他のいくつかの点であまり自分の好みに合致しなかった。

先ず純粋に物語が少し不明瞭すぎた。
理解不能な感じでいえば『ツィゴイネルワイゼン』と何ら変わりないが、物語とは関係のない部分が割と多いんじゃないかなと感じた。
どうせ分からないからいいのかも知れないが、物語ありきで狂気的な世界観が進行する方が、個人的に心地が良い。
それ故に本作『陽炎座』は少し心地良さに欠けた。

そして、何よりも松田優作が本作とはあまり合わないのではないかと思った。
『ツィゴイネルワイゼン』における原田芳雄があまりにも大正時代の放蕩者と合致しすぎた。
松田優作も、劇作家という役柄から考えればそこまでの違いはないのかもしれないが、やっぱり現代の人だなと思った。

ただ、やはり映像表現の芸術性、完成度は凄まじいものがあった。
一生忘れられないだろう。
よつゆ

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