しの田

家族の肖像のしの田のレビュー・感想・評価

家族の肖像(1974年製作の映画)
2.0
 露悪的なほど貴族然とした屋内装飾、あからさまに装った登場人物、あまり私の趣味でないが、徹底した貫徹は矢張り美しいと評されるべきものだと感じる。
 無人の豪華な部屋に笑い声と話し声だけが響く、空虚なショットはぞっとする程に効果的。映画を好み、碌に外出もせず画面を見つめるだけの私と、あの教授の性質はどこが違うだろうか。
 悲しみは心に残り続けることができない。いずれは忘れ去られてしまうというのは、浮世では呪いかもしれないが祝福でもあろう。しかし、教授の生きる学芸の世界では、それは問題にならないのではないか。彼は人が悲しむということは知っているが、自分自身の心でもって悲しみを体感することはない。
しの田

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