エミリオ・フェルナンデスというと『ワイルド・バンチ』のマパッチ将軍。メキシコの名監督であることは知っているものの、家父長的でアクの強いご面相の俳優としてしか接してこなかった。初めて見た監督作は、巨匠というにふさわしい重厚な作品だった。ブニュエル作品で親しんだガブリエル・フィゲロアの撮影が見事である。ドラマチックな構図、陰影、そして滑らかな移動。感情も熱い。酔い潰れた主人公が妻への想いを漏らし、それを聞いている酒場女が目に涙を浮かべるくだりにはホロリとさせられた。本作は、原作のスタインベックが脚本に参加し、スペイン語版と英語版が製作されたという。西欧視点のエキゾチシズムをアピールしている点では、『羅生門』、『地獄門』、『山椒大夫』といった1950年代に海外で高評価を得た日本の作品群と同時代性を感じる。
