北の螢
少し前の映画だが、また今年の夏も北海道へツーリングへ行く予定なので、北海道関連の映画を、と思い立ち、これを鑑賞したよ。
率直な気持ちを言えば、俳優陣が全般的に舞台劇のような大袈裟な演技をしていた点は、少々目に余ったよ。
仲代さんや露口さん、小池朝雄さんや成田三樹夫さん、そして、岩下志麻さんや夏木マリさん。
皆さん揃って歌舞伎のような演技をしておられた。
取り分け夏木さんのそれは、まるで里見八犬伝の玉梓そのものだったため、気になって調べてみたよ。
北の螢と里見八犬伝の撮影期間が被っていたようだな。
夏木さんは玉梓が抜けないまま本作のすま役を演じておられたようで、しかしながら、やはり玉梓でしかなく、今にも「しんべぇ〜〜」と唸り始めるのではないかと思えるほどに、玉梓だったよ。
さて、物語の内容についてだが、北海道の開拓の歴史については熟知しているため、当時の道路建設に駆り出された『囚人』たちが、どれほど過酷な労働を強いられたのかは存じ上げているが、この映画を観ていると、もはやそれは労働ではなくて、単なる拷問でしかなかったように見えるよ。
彼らの命懸けの労働が北海道開拓にどれほどの未来をもたらしたのかという史実を思えば、その犠牲もまた報われたと言ってあげたいところではあるが、しかしもはや拷問としか言えない彼らへの殺人的強制労働に対して、誰かがその責任を負ったのであろうか、と、今さらながらに情けなく思う。
俳優陣について、蛇足的に述べたいことを記しておこうと思う。
まず、佐藤浩市さんがどこで登場していたのか記憶がないよ。
それから、露口さんが若過ぎて、緒方直人さんに見えたな。
夏木勲さんが冒頭でチョイ役のみで死んでしまったことに驚いたよ。
それから、五社監督に言いたい。
あの熊はないわ……ひどすぎる……
本物を登場させることに猛反対をされたようだが、本物を出せない時点で熊を出すのはあきらめるべきだったように私は思うよ。
あの熊のせいで、最後に唐突に仮面ライダー化してしまったではないかね……
もったいない。
残念ながら、全体的に稚拙な映画になってしまっていた印象が強いよ。
五社監督の映画もドラマも、私が好きな作品が一つもないところからすると、たまたま感性の不一致なだけであろうと思うが、北海道開拓の歴史を語る作品作りに限っては、もう少し真剣に取り組んで欲しかったなぁ、という気持ちは残るよ。
以上だな。