半兵衛

江戸っ子繁昌記の半兵衛のレビュー・感想・評価

江戸っ子繁昌記(1961年製作の映画)
3.8
中村錦之助が『芝浜』の魚屋と『番町皿屋敷』の侍の二役を巧みに演じて存在感を示すが、『芝浜』パートに比べて『番町』の部分の演出が単調でやや物足りない印象に。他の作品を見ていても感じるのだけど、マキノ監督は武士階級に今一つ共感していないのでは。オチも町人礼賛になっているし。

それでも『芝浜』パートは中村錦之助の他に奥さんの長谷川裕見子、大家の坂本武といった名優のアンサンブルが見事でかなり楽しめる。殊更に錦之助が拾った財布を隠した長谷川の、目を覚ました近年にそんなものは無かったとどぎまぎしながら語る仕草は新派を思わせる細やかな動きとユーモアが入り交じった名シーンに。

二つのパートをつなぐ小林千登勢(魚屋の妹で、武士の家に奉公に行っている)の儚さも印象的で、二人の錦之助の感情を突き動かす悲運のヒロインとして存在感を示す。
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