映画おじいさん

旅路の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

旅路(1967年製作の映画)
-
冒頭の「芸術祭参加作品」に嫌な予感がしたけど序盤がちょっとタルいながらオーソドックスな語り口の良作でした。
関係ないけど、モンドセレクション金賞に美味いものなし、世界音楽祭参加作品に良い曲なし、と同様に芸術祭参加作品は大抵面白くないのはどうしてなのか。

風が吹きつける岬の映像、不倫(の疑い)に対する下衆なカッペどもの噂話など『ライアンの娘』(1970)の影響だろうと思ったら、こちらが3年早い…。シネフィル気取って他の人に話さなくて良かった!

不機嫌な仲代達矢に茶碗蒸しを出して、佐久間良子が「お嫌いですか?」と訊くと仲代が「大好きだ!」と即答するところがベストシーン。岡本喜八映画でのコメディアンぶりは最悪な仲代達矢だけど、こういう何を言ってもシリアス口調になるのを逆手に取ったコメディシーンは素晴らしい。

落ちぶれた良家の嫌味な佐久間の母と歌人気取りの姉・吉行和子もナイスアクト。何より仲代達矢の妹役の樹木希林が良かった。臆することなくサラリと本音を言うキャラは今と同じ。そこが嫌いという人が多いことも知っていますが。