シズヲ

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカのシズヲのレビュー・感想・評価

3.8
トンガリ頭とトンガリブーツ、サングラスに黒いスーツ。見るからに得体の知れぬ風体をしたシベリアのバンド、人呼んでレニングラード・カウボーイズ。成功を求めてアメリカに遠征することになった彼らの奇妙な道中が、すっとぼけたムードと共に描かれる。不思議な出で立ちの彼らが景色に溶け込んでいるだけで絵になる。

やっていることはあくまでロードムービー。しかしカウボーイズの奇妙な出で立ちが象徴するように、映画全体がシュールなテンポで構成されている。間の抜けたオフビートなユーモアが飄々と繰り広げられ、ヘンテコな空気感が独特の抑揚を生み出す。掴みどころがないようで、何処か憎めない趣がある。車に乗り切れなくてフロントに座らされる二人やエンジン盗まれてボコボコにされたりする下りで笑った。偉そうだが何もしてないウラジミールや頭髪が短いが故に仲間外れにされるイワンなどが妙に味わい深い。

カウボーイズは作中では何かとしょっぱい反応をされるものの、実際のところ普通に音楽的素養が高いのでしみじみする。当初こそポルカをベースにしていた彼らが旅の中でアメリカのカルチャーを取り込んでいき、ロックンロールやジャズ、ハードロックなど、どんどん音楽性を発展・変容させていく。彼らの演奏能力の高さに裏付けされるような柔軟さが見てて楽しい(殆ど即席で吸収していくカウボーイズは普通に凄い)。

序盤に出てくる車のディーラーを見て「なんかリー・マーヴィンの親戚みたいな俳優だな」と思ったが、よくよく見たらジム・ジャームッシュだったのでたまげる。アキ・カウリスマキ監督と作風が近くて親交があるらしいので、客演にも妙に納得がある。
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