すずき

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカのすずきのレビュー・感想・評価

3.2
旧ソ連のどこか、ツンドラに包まれた寒村で活動する大所帯バンド、レニングラード・カウボーイズ。
支配的なマネージャーが、芸能プロデューサーに売り込みをかけるも不発。
「アメリカだったら売れるかもな、現地プロデューサーの従兄弟を紹介してやる」と言われ、彼らは氷漬けになって死んだバンドメンバーも連れて、全員でアメリカへ。
ところが、アメリカでもプロデビューは断られ、「メキシコで親戚が結婚式やるから演奏やれ」と言われてしまう。
彼らは街から街へ、バーの演奏で日銭を稼ぎながら、メキシコへと向かう…

独特のオフビートなユーモアセンスの監督、アキ・カウリマスキが全力でコメディを作るとこうなる、という映画。
バンドメンバーは全員、先端が異常に尖ったリーゼントに、先端が異常に尖った革靴、そしてサングラス。
そのビジュアルからブッ壊れてるんだけど、やはりカウリマスキ作品、ツッコミの概念は無い。
ツッコミ不在のまま、彼らの珍道中を眺める、基本ユル〜い雰囲気のロードムービー。

ひとつ社会派だったのは、映画の主人公的存在、マネージャーのウラジミールの立ち位置。
労働はバンドメンバーに任せ、自らはほとんどバンドの為に働いている様子がない。
その癖、レストランで食事をし、大量のビールを飲むのはいつも彼だけ。
他のメンバーは、寒空の下で彼の食事が終わるのを待つか、彼から与えられる生タマネギに齧り付くかしかないという暴君っぷり。
とうとうキレたメンバーが彼を縛り上げるが、愚か者により縄は解かれ、再び彼がバンドを支配する。
その様子を「民主主義の復活」と言っているのが凄い皮肉。アニメ版「星のカービィ」かよ。