空海花

復讐するは我にありの空海花のレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
4.3
今村昌平監督作品。
松竹、今村プロの共同製作。
全国で詐欺、窃盗を重ねた上に5人を殺害。その犯行歴から“黒い金メダリスト”と揶揄された昭和の大悪人、西口彰をモデルにした佐木隆三の同名の小説を映画化。
ドラマもあるらしい。
こんな話をお茶の間で観ていた昭和時代🤯
小説は直木賞を受賞。
映画は日本アカデミー賞作品賞、監督賞など5冠、ブルーリボン賞4冠、キネマ旬報ベストテン1位。

主人公は榎津巌(えのきづ いわお)
緒形拳が演じる。
取り調べのシーンと回想の過去シーンが交錯する見事な構成である。
「パライゾの寺に~♪」と
キリスト教色のある民謡のような旋律が観る者の不安を煽る。
榎津にその相手を殺す理由など特にはない。快楽でさえない。
偶々という感じで、あっさりと人を殺す
でも念を押すように執拗に刺す。
包丁を買うシーンで
「安か方でよか」と言う声に妙にゾッとした。
緒形拳のこの低い声がいい。
昔の日本の俳優さんて本当いい声してるなぁ。
こんな人が逃亡を続けていたのだから、当時の日本人が震撼するのも無理はない。

物語は過激な彼の足取りを追うと共に
そんな彼の生まれや人物像を丁寧に炙り出す。
彼はサイコキラーのようだが
猟奇殺人が目的ではない。
だが支障になると判断するや否やその行為である。
そこがまた理解の外に出る恐ろしさ。

彼は長崎五島の出身で
キリスト教信者の家に生まれている。
彼自身に信心深さは微塵もないが、
その家に生まれたという事実が
血筋のように染みこんでいるよう。
島という閉ざされた風土
かつて宣教とキリシタン狩りのあった土地。
歪んだ感情や欲望。
それらが渦巻き凝縮され生まれたものなのか。
父の三國連太郎や
榎津の女房役倍賞美津子も
欲望のようなものを暗い蔭の中に押し込めている。
家族を格子の付いた戸から映したり、 構図も渋い。
2人がケーブルカーで白装束の人達とすれ違うシーンなど
おどろおどろしさが漂い
この世界の陰鬱さを象徴している。

榎津に惚れて、彼を匿う小川真由美が
若さと廃れた疲労が同居しているような
旅館の女将を熱演しているのも印象的。

登場人物の誰にも共感することはできる訳もないが
人間の奥底に孕んだ獣のような闇の熱量を、生々しいタッチと爆発的なエネルギーで描いた傑作。

キリスト教では絶望することが罪。
いやいや、何を仰るか。
罪と人間。宗教と矛盾。

人殺しの理由が着地を見せ
タイトルと重なるラストシーンが圧巻


2021レビュー#069
2021鑑賞No.101


フォロワーさんのレビューから
気になり鑑賞しました。
ありがとうございます✨

日本のドラマ仕立てのバイオレンス・クライム映画でしょうか。
このエロさは実はちょっと苦手なんですが😂
この熱感とエログロ感が韓国ノワールに受け継がれているような気がしないでもない。
ポン・ジュノ監督も影響を受けたそうです。
空海花

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