シンタロー

復讐するは我にありのシンタローのレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
3.7
実際に起きた[西口彰事件]を題材にした直木賞受賞の原作を、巨匠・今村昌平監督が映画化。多額の現金が奪われ、惨殺された二つの遺体が発見。事件の容疑者としてあがった榎津巌。別府の自宅は敬虔なクリスチャンの父と病弱な母が旅館を経営。榎津の妻子と共に暮らしており、榎津は父と妻の関係を疑っている。全国指名手配される中、榎津は大学教授を装い、浜松の旅館に身を寄せるが…。
現代では珍しくなくなったシリアルキラーものですが、当時はかなりの衝撃で、自分も初見はトラウマでした。誰でもよかった、有名になりたかった等々、たいした目的も動機もない殺人って、あの頃はあまりなかったと思います。ありがちな、いかにしてシリアルキラーになったか?みたいな、幼少期やトラウマを描くのでなく、榎津の生き様を描ききった所に、本作の価値はあるような気がします。他人を騙して欺いて、性欲絶倫で女とやりまくる、本能の赴くままに殺しまくる、とんでもない男だけど、どこか人たらしで憎みきれない。父親のような偽善者にはなりたくなかったということなのか。正反対のようでいて、本質は似ている父親との対比もおもしろい。ただ、何を言っても榎津が胸糞な奴であることには変わらず、後味がいいとは言い難いです。
こういう作品の場合、主演の役者がかなり重要で、本作の緒形拳はまさに名演。前年の「鬼畜」と共に高い評価を受けて、役者としての方向性も変わったのではないかと思います。細マッチョで体も仕上がってました。小川真由美はこういう頭の弱い尻軽女やらすとハマり過ぎ。今はこういう女優いなくなりましたね。倍賞美津子はこの頃本当に美しくて、色気もハンパない。義父・三國連太郎との温泉シーンがほんとエロくてヤバい。Wヒロインの色っぽいヌードは見所ですね。三國は気持ち悪い役作りがさすが。緒形との激突も素晴らしい。漫才師・ミヤコ蝶々と喜劇女優・清川虹子が独特な芝居、存在感を見せていて味わい深い。
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