70年代も後半の作品ながら、
ここまで「昭和」が感じられる作品とは、ちょっと予想外でした。
福岡県苅田町から殺人事件が始まるのですが、
個人的に一時期仕事の都合で苅田町に頻繁に出張していたので、
とても懐かしい気分になりました。
苅田町から北九州市にかけてはセメントの一大産地で、
入江の対岸に石灰石が露出した山が見える特徴的な風景を思い出しました。
その後、主人公は、指名手配を受けての逃亡中に、
浜松、雑司ヶ谷と転々としつつ殺人を重ねるのですが、
いちいち景色が「昭和」で、個人的には非常に楽しめました。
ただ、作品の中身は、タイトル負けしてると思いました。
主人公の殺人へのハードルが低過ぎて、
逆に、犯人の心の闇がほとんど感じられず、
なかなか共感するフックが見当たらないのですよね。
詐欺師がターゲットを見定めて、関係を深めていく経過は
別につまらないこともないのですが、
そうこうしているうちに、序盤は突発的に殺人行為に走り、
後半は、いつの間にか相手が死体になっちゃってて、
犯人の心の内面が変化するような過程が全く描かれないのですよね。
ちなみにタイトルは聖書のペテロによるロマ記からの引用で、
英語だと「Vengeance is mine」, saith the Lord。
復讐するのは神である私の役目だから、
人間は復讐にとらわれずに生きなさいという意味。
そもそも被害者は復讐されるようなことは何もしてないので、
あえて解釈するなら、クリスチャンの父親に対する復讐となりますが、
赤の他人を殺すことには結びつかず、
なんだか中途半端で、よくわからないまま終わってしまったなという印象です。
役者陣が実力派ぞろいで、それで何とか持っているところがあるなと思いました。