スクリーン2番

復讐するは我にありのスクリーン2番のネタバレレビュー・内容・結末

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「汝、人を殺めるなかれ」
キリスト教カトリック信者の家庭に生まれながら信心を持たず、聖書に背いて人々を殺し回った実在の殺人鬼、西口彰をモデルとした実録映画。
「俺たちに明日はない」や「JOKER」なんかも似たような分類の映画であると思う。この映画が目指したのは殺人者の内面を浮き彫りにすること。なぜ人は人を殺すのか。
挑戦はしているが、答えは描かれていない。殺人鬼の内面なんて分かり様がないらしい。
その証拠に、物語ラストに撒いた骨が空中で静止するという怪奇現象を起こしてみせることで挑戦の撤回、白旗を上げている。

「復讐するは我にあり」というタイトルは調べてみたところ新約聖書からの引用だとか。
裁きを下すのは神のみであるという意味であり、その意味の通りに映画は終始、殺人鬼巌の犯行をフラットに描いている。
徹底したリアリズム。なぜ巌が人を殺すのか、個々の殺人の理由が追求できない不気味さ。理解を超えた殺人者であるから、遺骨が空中で静止するという怪談のような現象も起こり得てしまう。徹底されたリアルの最後が唐突なオカルトであるから、そのインパクト大のラストが頭から離れない。
長いんだけど観て良かった。
緒形拳のド根性演技に脱帽。