チッコーネ

生きていた野良犬のチッコーネのレビュー・感想・評価

生きていた野良犬(1961年製作の映画)
3.2
最近赤木圭一郎の主演映画をよく観ていたのだが、脇で支える二谷英明のノーブルかつ男臭い存在感にも、やられていた。何より目元がいい。
本作は赤木の急逝後にダイアモンドラインの一角を補填することになった二谷の、主演作。
ムショ帰りのヤクザ者を演じており、どこか東映映画のような雰囲気も漂う作品だ。

二谷は赤木よりも10歳近く年上なので、比較的思い切った演出が与えられている場面も多い。
中でもムショ暮らしで溜まりに溜まった性欲が、暴力へ向かう場面には驚かされた。
雑踏を活用したロケ場面が多く、役者たちのクローズアップが入れ替わるラストシーンの迫力も、印象的な作品である。

しかしやはり、二谷の魅力は「暴走する若者を諫め、方向性を指し示す落ち着いた男性像」を演じる時にこそ発揮されると、本作で再認識。
またどうせワルを演らせるなら『幕末太陽傳』での侍役(作品内で最もイイ男だった)よろしく、無精髭を生やさせ、ワイルドな魅力を引き出して欲しかった。

なお彼の主演作は、ほとんどソフト化されていない。
名画座が特集を組んでくれるのを待つばかり…。