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レッズの一人旅のレビュー・感想・評価

レッズ(1981年製作の映画)
4.0
ウォーレン・ベイティ監督作。

ロシア革命に立ち会った実在の作家ジョン・リード。彼は共産主義を母国アメリカでも実現しようと活動を続けるが・・・。

「共産主義=悪」のような図式が一般的だけど、この映画を観て新たに感じたことがある。資本主義も共産主義も、方向性は違えど国民の暮らしをより良くしようという理想から始まったことは同じはずだ。
出発点である理想そのものは悪ではない。ジョン・リードも、資本家によって搾取されるプロレタリアートの困窮した状況を改善したいと願った。それがたとえ“革命”という形になったとしても、それが正義だと確信していたのだ。
共産主義が失敗してしまったのは、その後の経済停滞と、それに伴う国民の不満や怒りを粛清や抑圧といった暴力的な手段で鎮めていったことだ。体制を維持するために使用した手段に問題があった。結果論だけで共産主義に悪のレッテルを貼るのではなく、原因や動機を含め総合的に評価する必要があるのではないだろうか。

ジョン・リードも始めは理想に燃え、地道な活動を続ける。しかしロシアに密入国し、リードが率いる米社会党の承認をコミンテルンから得ようと奔走し始めるあたりから彼は変わっていく。
『手段は何でもいい。犠牲は伴うものだ』
妻ルイーズ(ダイアン・キートン)に対して言い放ったリードの姿に過去の面影は無い。
さらにフィンランドでの拘留、中東での遊説といった過酷な活動が続いたことでリードの心と体はズタボロになっていく。

「一体何のために・・・」
観てる側はそう思わざるを得ない。

劇作家ユージン(ジャック・ニコルソン)はリードとは対照的な人物だ。ユージンは日和見主義でリードの活動をどこか蔑んでいる。
そんなユージンに対しルイーズは
『あなたは誰かの役に立ったことがあるの!?』と激怒する。

果たしてどちらが賢いのか。賢さで言えばユージンのような生き方だろう。今の生活を維持し続けることが最優先。
一方のリードは自分を犠牲に理想を追い求めている。
大多数の人間(自分も含め)がユージンに近い生き方をしているのではないだろうか。
共産主義に限ったことではない。
現状を打破しようという何らかの理想に燃えるごく少数の人間だけが世界を変える力がある。
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