たく

影なき殺人のたくのレビュー・感想・評価

影なき殺人(1947年製作の映画)
3.7
コネチカット州で起きた実際の事件に基づく話で、実直な地方検事をダナ・アンドリュースが好演してた。裁判劇を通じた骨太な社会派の作風にエリア・カザン監督らしさを感じる。ハーヴェイ検事のモデルは当時実在してたアメリカの司法長官なんだね。

ある日、街の住民からの人望が厚い神父が殺されるも犯人がいっこうに捕まらず、警察と州検事が焦りを見せていく。これを新聞記者たちが面白おかしく記事に書き立てて、世論の批判を形成していくあたりが今も昔も変わらぬマスコミの胸糞悪い習性だね。やがて犯人とおぼしきウォルドロンが逮捕され、何やら政治的な思惑があって彼が容疑者として起訴されそうになるんだけど、どうもこの政治的な駆け引きの部分が頭に入ってこなかった。いずれにしても無罪を主張するウォルドロンが自白を強要され、裁判劇になっていく。状況証拠的にはどう考えてもウォルドロンに不利なんだけど、しっくりこないハーヴェイ検事が自分の損得を顧みず彼の弁護に立って真相を突き止めようとする雄姿にジーンと来る。

裁判は完全不利な状況のまま進んでいよいよウォルドロンが起訴されるかというところで、当初から一貫してウォルドロンが犯人であると主張してきた証言者たちに実は裏があることが分かって形勢逆転の兆しが見えてくるのが胸熱展開。終盤の拳銃の実験シーンはハラハラしたね。

カール・マルデンのキャリア初期の作品で、本作の後にエリア・カザン作品に何本も出演して常連になるんだね。リー・J・コップも本作の後にエリア・カザンの「波止場」に出てたし、その後の1957年シドニー・ルメット「十二人の怒れる男」での有罪にこだわる陪審員は強烈だった。
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