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影なき殺人のryosukeのレビュー・感想・評価

影なき殺人(1947年製作の映画)
3.6
エリア・カザンといえば「欲望という名の電車」の監督なので、メソッド演技法の脂っこい演出が見られるのかと思ったが、演技はスタンダードな感じだった。
全体的に淡々としており、主人公(ダナ・アンドリュース)の無罪弁論や、被疑者を民衆が取り囲むシーン、証人の証言の矛盾を暴くシーンなどもっとドラマチックにも出来たろうが、冒頭に示された通りあくまで実話ベースであり、リアリズム志向という訳だろうか。
当事者主義をがっつり逸脱し、「民衆の権利の監視者」を名乗って検事に圧力をかける裁判長など、こんなことは現実にはほぼ無いと信じたいが、劇中で明示される法曹倫理「検察官の目的は有罪獲得ではなく正義の実現」を順守し、自己の良心に従って無罪弁論をする検事などもっとありそうにないのが悲しいところ。こうであって欲しいところだが。ラストのナレーションの通り、やはり実話においては検事ではなく弁護士だったようだ。
地方検事が旧知の警官に喧嘩を売るのは今後の職務にも響くのだろうし、署長に対して証人尋問請求する瞬間の、主人公と署長の一瞬の短い切り返しの重みを想像してしまった。
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