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イタズ 熊のIMAOのレビュー・感想・評価

イタズ 熊(1987年製作の映画)
3.5
この映画、友人が学生時代に観て号泣したという話を聞いて、ずっと観たかった映画。まあ、かなり大雑把な作りではあるけど、最後は確かにちょっと泣ける。今回もラピュタ阿佐ヶ谷ですすり泣きの声が…

昭和初期の秋田。マタギ(猟師)の銀蔵は、誤って親子連れの熊を撃ってしまう。その子熊をゴン太と名付け、孫の一平と供に育てるが、熊を山神と祀る習慣もあり、ゴン太を山へと放つことになる…

「イタズ」というタイトルにもなっている言葉は東北地方の方言で、“神からの授かりもの”ということで尊んだ「熊」の呼び名だそう。熊は「山神」であり、熊も含めた動植物は無闇には殺してはならない、という生活の知恵がこの当時の文化には根付いていた。しかし、この時代の背景には、第一次世界大戦を経て、資本主義社会、工業化の波が押し寄せている。この映画の中で描かれるのは、銅山開発で行き場を失った動植物と、それを生活の糧としていた人々だ。マタギである銀蔵はまさにそういう人物の一人で、彼は失われてゆく世代なのだ。
この映画でマタギの銀蔵が「人間の味を覚えてしまった熊は幸せにはなれない」と語る。彼は自らが犯した罪を償うためにゴン太を撃つのだが、それは「山神様に謝る」ことでもあるのだ。そうした発想は実は今こそ見直されるべきものかもしれない。実際、アメリカの国立公園では、熊に襲われた時に人間の食料を食べないように、熊が開けることが出来ない通称「クマ缶」という特別な容器に食料を入れるルールがある。一度、人間の食料の味を覚えてしまった熊は人間を襲うことになるので、双方が不幸になってしまう。それを防ぐための発想だそうで、それは正にこの映画で語っていたこととまったく同じだ。

田村高廣主演、脇に桜田淳子、由利徹、清川虹子など、なかなかのキャスト。でもやはりなんと言っても凄いのはクマですね^^ほとんどのシーンが本物のクマで撮影されていて、そのリアリティーがこの映画を支えています。多分相当撮影にも時間かかったんじゃないだろうか?何しろ雪山+クマ+時代物という難しい条件だらけですから…
電通がからんでいて、なぜか主題歌(というか挿入歌)がイルカ。子熊のゴン太と一平が遊ぶシーンは、この曲に合わせて突然メルヘンチックになったりする。この当時、動物映画が世界的に流行っていて(『子熊物語』『南極物語』『ドン松五郎の生活』など)その流れの中で作られた作品であるのは間違いない。日本もバブルで、電通も映画に相当投資していたのだろう。
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