デヴィッド・O・ラッセル監督が、実在のプロボクサーのミッキー・ウォードとディッキー・エクルンドを描いた2010年のアメリカ映画
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第83回アカデミー賞で助演男優賞(クリスチャン・ベール)、助演女優賞(メリッサ・レオ)を受賞した
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ボクシング映画というのはドラマチックに作りやすい。試合までの苦労などが、勝利で一気に昇華されるからだ。特に実在のボクサーを題材にした名作は多い。「ザ・ハリケーン」も名作だし、ボクシング映画の最高傑作と言っていい「レイジング・ブル」も同様の映画だ。
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昔は町の英雄だったがジャンキーに成り下がった兄とステージママ気取りの母親。ボクシングの試合以前に、敵は近くにいるという展開。恋人ができて、家族から自立していくんだけど、大切なものは失いたくないっていう主人公の姿は感動的だったね。兄の変化に注目。
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ミッキーを演じたのは、製作も務めたマーク・ウォールバーグ。実際に荒くれ者だった人だから、ボクサーの役はぴったり。マット・デイモンとイメージがかぶる気がするけど、ゴリラ系だからかな。恋人役のエイミー・アダムスは、いつものヒロインらしいヒロインより、強気な女性だったから新鮮だった。
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圧巻だったのはオスカーを受賞したディッキー役のクリスチャン・ベール。マークより年下なのに兄役というのも驚きだけど、コカイン中毒の元ボクサーの役作りのために13キロ減量し、髪の毛を抜いて、歯並びを変えた。「マシニスト」での減量も有名だけど、デ・ニーロ・アプローチをここまで徹底してやる俳優はなかなかいない。死体の役だったら死んじゃうんじゃないかと心配してしまう。「バットマン」の時とのギャップにびびった。
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助演女優賞を受賞したアリス役のメリッサ・レオも負けていない。典型的なステージママタイプで、自分が足を引っ張っていることに気づいていない。空気を読めないおばさんという痛い女性。ものすごくイライラさせられるのに、最後の方ではイライラしていたのを忘れていた。受賞のスピーチで放送禁止用語を言った素敵な女優さん。
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兄弟愛や再生を描いた素晴らしいドラマだったと思う。ただひとつ気にかかるのは、チャンピオンになったのがマイナー団体だってこと。ボクシングに興味がない人にはどうでもいいだろうけど、格闘技ファンとしては、マイナー団体で世界チャンピオンって言われてもなあ。それはそれとして、映画としては素晴らしくよくできた作品だったね。