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フィッシュストーリーのodyssのレビュー・感想・評価

フィッシュストーリー(2009年製作の映画)
3.5
【あり得ないけど、味がある】

ありきたりのストーリーをバラバラにしたしただけ、という見方もあるようだけど、ちょっと違うと思う。

例えば「正義の味方」。
月光仮面や七色仮面やナショナルキッドが幅を利かせていた頃ならいざ知らず、いまどき「正義の味方」なんて全然はやらない。(ゴレンジャーを一所懸命に見る幼児は別にして。)そのはやらないものを、いかにしてもっともらしく登場させるか。後からその成立の秘密が分かるわけだけど、分かってもシュールだよね。

バンドのシーンも、一見するとリアリティがありそうだけど、でもあり得ないんじゃないか。ああいう理由で音を途中消してしまうってのは。

また、フィッシュストーリーというタイトルの由来も、いくら戦後の混乱期だからっていったって、あり得ない。しかも、あり得ないところから出てきた「もしもオレの苦悩が魚だったら」って詩句が、シュールなりに詩になっているところが、またあり得ない。語学力のない人間が誤訳だらけの訳書を出すこと自体はおおいにあり得るけど、それがあそこまで詩になっているってのは、不可能だろう。

というように考えてみると、この映画は時系列をバラバラにすることで、むしろシュールさを隠していると言えるわけ。そこに味がある、と私は思いましたけどね。

最後に、彗星が爆発するシーンで、爆発と同時に爆発音が聞こえるって、あり得ない。音は光よりはるかに遅いんだから、閃光のしばらくあとに音が聞こえるのでなきゃおかしいでしょ。あり得ないんだよ、ったく(笑)。
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