シズヲ

天使にラブ・ソングを2のシズヲのレビュー・感想・評価

天使にラブ・ソングを2(1993年製作の映画)
4.0
シスター・クラレンス、カムバック!そういや見ていなかった続編。ギャングの存在が絡んでてコミカルながらサスペンス的な趣もあった前作に対し、本作はデロリスが落ちこぼれの学生達を導く学園モノと化している。ただ「シスターに扮したデロリスがその活力で荒れた環境を変えてみせて、正体バレによる窮地が迫りながらも最後は乗り越えて歌唱で大団円」という大筋自体は同じなのですんなり飲み込める。嫌味な理事長を見て「ジェームズ・コバーンみたいなおっちゃんだなあ」と思っていたら本当にジェームズ・コバーンだったのでたまげる。

人気シリーズの続編では度々あるとはいえ本作は「デロリスのキャラクター性が観客に認知されきっている」ことを積極的に利用してて、教師として学生達を導くデロリスの説得力を前作での描写と歌唱パートが担保している。本作は「最早そこを過度に語る必要すらない」と割り切ってるような潔さを感じてしまう。作中における展開や掘り下げは良くも悪くもご都合主義的な部分が目立つけど(この頃の娯楽作らしいと言えばそう)、デロリスというキャラクターそのものが骨子になることで行間を埋め合わせている。このおかげで諸々の描写を簡略化しつつ、スムーズなテンポを引き出すことに成功している印象。歌唱パートという最大の見せ場も相変わらず良いし、大筋の流れも前作を踏襲しているので、修道院→学校という形でシチュエーションが変化しながらも馴染みやすく取っつきやすい。そんな訳で前作を見ている観客、またはデロリスの魅力を認知している観客ならば、本作もすんなりと楽しめる。

学園側の登場人物に関してもリタを中心に焦点を絞り、その上でデロリスが引っ張りながらキャラを立たせているので最低限の描写でも一定の魅力や存在感を保っている。ローリン・ヒルを始め、制服を着崩した生徒達のビジュアルが90'sストリート系のスタイリッシュさに溢れていて好き。脇役である教師サイドも憎めない味がある。本作は人気シリーズ映画としては当時画期的だった“黒人監督による続編”とのことだけど、その影響もあってか生徒達の人種構成など“黒人のコミュニティ”としての描写も目立っているのが印象的。黒人としての強い自負を持つアマールくんの存在、デロリスへの陰口で人種ネタを絡めて「そういうのやめようぜ」的な空気になる人種混合友達グループの姿など、要所要所で人種の坩堝としてのアメリカの姿が垣間見える。

そんなこんな言いつつ前作でデロリスと仲良しだったシスター三人組が本作でも相変わらず親しく絡んでくれたり、前作で改心した院長が理解者としての立場に立っていてくれたりなど、やはりニクい描写も多くてしみじみしてしまう。院長が前作でデロリスにやられたのと同じ構図でジェームズ・コバーンに仕返しするのも粋で好き。そしてやはり終盤のコンクールやスタッフロールなどの陽気な歌唱パートは相変わらず高揚感に溢れていてとても良いし、度々流れるファンクでソウルなBGMもさりげなく好き。
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