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トム・ホーンのodyssのレビュー・感想・評価

トム・ホーン(1980年製作の映画)
3.2
【用済みの人間は殺された時代】

BS録画にて。

アメリカ西部で活躍した実在のガンマンの晩年を描いています。
もっとも、晩年と言っても、実在のトム・ホーンが処刑されたのは満43歳になる前日のこと。20世紀になったばかりの時代で、日本で言えば明治30年代です。

この時代、平均的な人間は50~60歳で死ぬのが普通だったでしょう。日本で言えば夏目漱石は40代で死んでいますから。森鴎外はちょうど60歳で。

ちなみにこの映画で主役を演じているスティーヴ・マックイーンは、映画が公開された1980年に他界していますが、ちょうど50歳。

牛泥棒が横行していた西部の町で、それを何とかしようとトム・ホーンが雇用されるのですが、昔流に、泥棒を発見したら銃で撃ち殺してしまうやり方。
西部でも徐々に社会的秩序が重視されるようになってきており、彼はそういう時代には合わない。
そもそも、この時代にはすでに白人は西海岸に到達し、「西部開拓」は事実上の終わりを告げていたのです。

ちなみに一時的に彼の恋人になる小学校教師の女性はハワイ出身(といっても白人)という設定ですが、独立国家だったハワイがアメリカに併合されたのは1898年のこと。彼女はアメリカの一部になったばかりのハワイ(西部よりさらに西ですね)から来ているというのも、何となく示唆的です。

いずれにせよ、彼は14歳の少年殺しという嫌疑をかけられ、今なら到底有罪にならないような証拠をもって死刑となるのです。牛泥棒も彼に殺されて姿を消したし、用が済んだら厄介払いという町民たちの論理は、これが実話に基づいているだけに、その分深刻に受けとめるべきでしょう。
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