Yuzo

トム・ホーンのYuzoのレビュー・感想・評価

トム・ホーン(1980年製作の映画)
5.0
中3の時に一人で映画館で観て以来40年ぶりの鑑賞。スティーブ・マックイーンは年齢以上に老けて見えるが健康上の影響もあっただろう。役どころが時代に取り残された伝説の男なのだから、本人とシンクロして晩年の代表作になってもおかしくない題材なのだが、残念ながらそうはならなかった。

前半ライフル銃を使うシーンでは銃弾を込めるところや照準器を使うところを丁寧に撮っている。照準器で狙いを定める時に顔を歪めるのもカッコいい。馬を馴らすシーンではロープを使ったり鞍の着け方を指示したりカウボーイの手際を丁寧に撮っている。馬に乗ってバックする技?も見せる。
このようにマックイーンは映画の中で道具を使った細かい動作をきちんと見せることで自分のアクションのリアリティを担保している、つまり本物と思わせているのだ。これを観客の視線を自分に向けるために確信犯的にやる。「荒野の七人」でライフルの弾を耳元で振る(火薬の詰まり具合をチェックする)小芝居を勝手にやってユル・ブリンナーを激怒させたってやつだ。

後半は地味な展開が続くが、マックイーンが饒舌に語る訳もなく、遠くの山並みを無言で眺める演出は彼にふさわしい。彼のフィルモグラフィでいえば「華麗なる週末」や「民衆の敵」のようないわば文芸路線の作品といえるのかもしれない。晩年の作品として西部劇がつくられた事はファンとしてとても喜ばしく思う。
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