一休

王女メディアの一休のレビュー・感想・評価

王女メディア(1969年製作の映画)
4.6
新宿武蔵野館でデジタルリマスター版が上映されると知って、あのビンビンだった高校生の頃を思い出して観に行ってきた。
初めて観たのは、確か1981年の札幌須貝ビル、地下にあった小劇場だった。
当時、ポルノ映画以外は年齢制限もなく、高校生だったオイラも妄想ギラギラ状態でこの映画を観た事を覚えている。
1回観て、映像のショッキングさは伝わったのだが、ストーリーの細部までは理解しきれなかったので、5回観た記憶がある。
3回目で、「あ、これって【アルゴ探検隊の大冒険】の後日談じゃん!」って事が分かって、スルスルスルっとストーリーが頭に入ってきた。
【アルゴ探検隊の大冒険】は、クレイアニメーションのレイ・ハリーハウゼン監督のギリシア神話を元にした名SF作品である。
ペリアスにテッサリアの王位を奪われようとするとき、乳母が女神ヘラに赤子の庇護を求めた事で、ヘラはその子を守ることになった。
しかし、ペリアスはヘルメスから「片足裸足の男がお前を殺して王位を奪いに来る。」と告げられ、20年後にその男ジェイソンが現れる。ジェイソンはコルキスの黄金羊毛を持って来て王国の奪還を目指すことにした。
ジェイソンは、英雄を集め、タロスやヘカテ、ヒュドラや骸骨剣士を退け、コルキスの女王メディアの協力を得て黄金羊毛を持ち帰ることに成功する。
というストーリーだった。
この作品はイタリア語なのでジェイソンはイアソンとなっているし、物語のメインはイアソンではなく、コルキスのメディアになっている。
だから、映画が始まると、いきなり貧相なケンタウロスが画面いっぱいに出て来て、魔法を操るコルキスのショッキングな風習を延々と語りだすという、訳の分からない場面が続くので、この時点でストーリーから乖離されてしまう事請け合いだ。(笑)
イアソンが英雄たちと筏(船ではないww)でコルキスにたどり着き、メディアが弟を殺してまでイアソンに黄金羊毛を奪わせ、一緒にテッサリアへとやってくる。
そこから、イアソンに対するメディアの心情が、叙事詩の様に語られていく場面が続く。
そして、イアソンの本来の目標に対して、メディアはどういう裁断と決心をするのかが見所という作品だ。
このメディアを当代随一のディーヴァである、マリア・カラスが演じている。
監督のパゾリーニは、【ソドムの市】などで分かるようにショッキングな絵で構成される作品が多いのだが、アーティストに友人が多く、マリア・カラスも「パゾリーニに依頼されたら、出ないわけにはいかない。」と言って出演を快諾したそうだ。
この映画を1度観ただけで評価はせず、ストーリーに付いていけなかった人は、ぜひ【アルゴ探検隊の大冒険】を観てから、再度、観て欲しいと思う一休なのであった。
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