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塩狩峠のtheocatsのレビュー・感想・評価

塩狩峠(1973年製作の映画)
4.8
史実を元にしたキリスト教信者殉死物語

数年おきに何度となく見返している映画。

最初に見た時の衝撃と感動は非常に大きいものがあった。
早速原作を図書館で探し読破、ネットでも情報を漁り事故そのものは本当としても人間ドラマ部分に関してはフィクションが盛り込まれていることも知った。
それでもなおかつ何度も見返すのは本作にキリスト教徒のみならず、全ての人に向けての普遍的な〝人間愛”が描かれていると思うからだ。
※〝神の愛”と言うとまた違うようにも感じる。

原作者:三浦綾子さんはキリスト教プロテスタント信者。
塩狩峠を皮切りに彼女の主要著作はほぼ全て読破。彼女の信仰的態度が投影された著作群であり、そういった世界観を深く心に刻んでいれば本作もより味わい深いものとなろう。

本作により明治のあの時代のキリスト教(耶蘇教)がどんな目で見られていたかの片りんが伺える。
しかし、近年におけるカルト的新興宗教に対するのとは違うような反応だったのだろうとも推測される。
※不気味な恐怖心というよりはくやっかみ的排除心理だったのかもしれない。

この作品への好ましい印象が持続しているのは中村登監督の真摯・堅実な演出も大きいと思われる。
フィルム撮影によるクスミ感。ロケ地北海道の伸び伸び寒々とした景観や空気感も個人的には郷愁を誘うものであり、総じて忘れがたい作品の一つとなっている。

4.8の五つ星

002012
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