荻昌弘の映画評論

ベーブ・ルース物語の荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

ベーブ・ルース物語(1948年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 不出世のホオムラン王ベエブ・ルウスの伝記映画である。ベエブの生前に企画・撮影されたが、この映画の完成直前に彼は死しんでしまった。
 アメリカのみならず、野球のある所彼の名はいわば神話的存在だから、彼の伝記映画が作られるのは当然だが、この作品、やゝ「打撃王」の二番煎じの感じがつきまとっている点、多少物足りない。劇の組立ても似ているが選手の生涯を描くのに、その栄光よりも、栄光の後に来る哀愁に重点をおいている所まで同じで、ここの種の映画にも一定の型があることを思わせる。しかも出来栄えからいって、ゴオルドウィンとロイデル・ルウスでは、作品の格が違うのはあたりまえ、主人公の大きさに比べて、映画の押出しはこちらがずっと弱い。
 一見ベエブの人間味に重点を置いたように見えながら、結局何を中核にするでもなく平板に流れてしまった一篇であるベエブに扮するウィリアム・ベンディクスは懸命の出演だが、ユニイクな個性が、却ってベェブになりきることをさまたげているような個所もある。
『新映画 7(12)』