半兵衛

美女と液体人間の半兵衛のレビュー・感想・評価

美女と液体人間(1958年製作の映画)
3.2
重要な場面で降る雨による湿気と舞台となるキャバレーなどのアダルトな世界観が他の特撮作品にはないエロチックで湿ったムードを醸し出す一作。じめじめとした空気漂う画面が液体人間のぐにゃぐにゃとした存在感にリアリティを与え、見る人にその不気味な肌触りを伝える。特に液体人間が壁を這ったり、人を飲み込む仕草をCGを使わずにこれだけ表現してしまう特撮スタッフの技量に驚かされる。

一方で映画に映される東京の街角や橋、車、キャバレーの様子など今となっては『三丁目の夕日』のようなノスタルジーに満ちた世界になっていたりもする。

佐原健二、平田昭彦、中丸忠雄、土屋嘉男、中島春雄(液体人間と顔出しの二役)、大村千吉といった東宝特撮作品ではお馴染みの面々が画面を賑わし安定感をもたらす。その一方であまり特撮作品には出ない印象の小沢栄太郎、千田是也、佐藤允がいつもの東宝特撮とは違うアダルトなスパイスをもたらす。あと小沢栄太郎の現場で働く刑事役って珍しいかも、いつもは偉い人を演じている印象の多い人だし。

意志がないはずの液体人間が、人間の記憶を残しているかのようにかつての恋人の前に現れる姿は怖さと同時に哀れさも感じられる。そんな液体人間が人間たちの手によって滅ぼされていくラストは少し切ないが、その手段である「下水道に火をつける」というやり方があまりにも度を超えていてその結果東京中に火の手が回る画で終わるため苦笑してしまう結果に。

いつもはOL役の印象が強い白川由美の、いかがわしいキャバレーで働く肌も露な姿が新鮮で妙にエロい。
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