Motoki

二重の鍵のMotokiのレビュー・感想・評価

二重の鍵(1959年製作の映画)
3.9
円の中で移り変わるカラフルな色が印象的なタイトルロールに続いて、ラテン風の音楽をバックに南仏の陽光の中で、ベルナデット・ラフォンが卒倒級のセクシーな下着姿を見せてくれる。やんちゃ娘を演じさせたらピカイチの彼女の魅力が全開。そこからいい感じのテンポで進んでいく。

ベルモンドは『勝手にしやがれ』のミシェル・ポワカールに通じるような若者の役を好演。他のキャストの演技も上手いので安心して見ていられる。

全体的には、構成や音楽の使い方などがハリウッド映画のようでもあるが、随所で光るセンス抜群のカメラワークが個性を与えていると思う。
色彩や装飾はなかなか大胆だが、散漫な印象を受けない点が素晴らしいと思う。日本趣味に溢れたリダの部屋からは、シャブロルが当時関心を抱いていたものをこの作品に織り込もうという努力が感じられる。初のカラー作品ということで意欲に溢れていたのだろう。

終盤には、「錯綜する憎しみの行き着く果て」とでも言うべきものを見せつけられるが、見終わった後、重苦しい気分にならないのはやはり演出の妙によるものだろうか。

ところで本作でベルモンドが演じるラズロ・コヴァックスなる青年だが、妙に馴染みのある名前だったので調べてみたところ、ハンガリー出身の著名な撮影監督で同名の人物がいるらしい。さらに『勝手にしやがれ』で、同じくベルモンドが演じるミシェル・ポワカールの用いる偽名がラズロ・コヴァックス。さらに『気狂いピエロ』でベルモンドが演じる役名もラズロ・コヴァックスで、現実のラズロ・コヴァックス同様に1956年のハンガリー動乱亡命者というように奇妙にリンクしている。
するとベルモンドは計3回もラズロ・コヴァックスを演じていることになり、勝手な妄想を膨らませてしまう。
例えば、3作の製作順を辿ると本作のラズロが『気狂いピエロ』のラズロと同一人物である可能性。あるいは、本作のラズロが偽名で、その本名がミシェル・ポワカールであり、『勝手にしやがれ』のミシェルと同一人物である可能性。さらには、ラズロとミシェルのどちらかが本名か偽名でそれを巧みに使い分けていたとすると3作でベルモンドが演じる全てが同一人物という驚愕の裏設定を思い描くことができる。
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