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二重の鍵のodyssのレビュー・感想・評価

二重の鍵(1959年製作の映画)
2.0
【ブルジョワ家庭の解体】

1950年代末のフランス映画ですが、今見ると焦点がはっきりしない作品です。

一応殺人事件が起こるのですが、その犯人の意外さだとか、殺人方法のトリックだとかで見せる作品ではありません。つまりミステリー的要素はないと言っていい。

じゃあ何がこの映画の見どころなのかというと、多分ブルジョワ家庭の解体でしょう。家長は隣家の若い女と不倫に走っているし、長女の婚約相手は傍若無人な若者で大人の顔をしかめさせるような振舞いばかりしています。このどうしようもない若者を演じる若き日のジャン=ポール・ベルモンドが見ものかも。

もう一つの見どころは女優の美しさでしょうか。最初、ブルジョワ家庭の若い女中が下着姿で登場して御用聞きを魅了するシーンから始まるのですが、この女中と、ベルモンドと婚約している令嬢と、そして当主の不倫相手の若い女が、いずれも少しずつタイプは異なるもののみな美形で、今どきのフランス映画に比べて女優の外見が重視されていたらしい当時の映画界事情が何となく分かります。

しかしブルジョワ家庭の解体を描くなら夫人も不倫に走ってくれないといささか片手落ちだと思うのですが、脚本が渡辺淳一でないせいか(笑)そこまではいきません。今から見ると不徹底という印象を与えるのはそのためでしょう。
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