月うさぎ

オーシャンズ13の月うさぎのレビュー・感想・評価

オーシャンズ13(2007年製作の映画)
4.0
「オーシャンズ」がラス・ベガスに帰ってきた!
前作と比べて予想を超えたオーシャンズたちの……真面目さに驚く。
とにかくこれは宣戦布告もある「仁義ある闘い」なのだった。

意味不明なお遊び満載で人物が軽佻浮薄だったオーシャンズ12の不評に反省した一同がリベンジとして取り組んだ?
男っぽさとシリアスさそれにコミカルな演出も忘れない楽しい映画に仕上がっている。

オーシャンの師でもある、実業家のルーベンが新規ホテルの共同経営者バンク(アル・パチーノ)に裏切られたショックで心筋梗塞を起こし、寝たきりになってしまった。
ルーベンを蘇らせるためにバンクに闘いを挑むオーシャンズ。

仲間への誠実な情を持った面々の固い結束をストーリーの軸に据え、ゴージャスな舞台とお宝のスケールの大きさを映像で表現。

今回は女は抜き。テスもイザベルも登場せず。
お色気に関してはライナスが古典的な誘惑作戦で敵の女性幹部にせまるというコメディ部分で年増女が笑わせてくれる程度。


最高に意表を突いてくれたのは、仇敵、テリー・ベネディクト(アンディ・ガルシア)の役割だ。
テリーは、ラスベガスの大カジノ「ベラージオ」「ミラージュ」「MGMグランド」のオーナーで、「オーシャンズ11」では金庫を破られた被害者だった。
オーシャンには女の件でも恨みを抱いており、実業家の表の顔とは別の裏の顔を持つ超怖い男。
資金提供を持ちかけるオーシャンに、交換条件としてバンクのご自慢の資産であるダイヤモンドを盗み出すことを科す。
どっちもどっちの太い神経ですね。
盗むか死か。
復讐と盗みとダブルのハードルをどうやってこなすのか。

大がかりな計画をメンバー総出で仕掛けるチームを感じさせるのは1作目の11と同様。
同時進行していく復讐計画と共に作戦の進行のスピード感が楽しい。
何やってるんだろう?とよくわからない行動が、あとから、なるほど、この準備だったのねとわかるようになっている。
大きなだましはないものの、今回は映像のさまざまな所に伏線が配置されているので
一回観ただけでは見逃すシーンもたくさんありそう。

ストーリー的にすっきりしていて、アル・パチーノの悪役も悪役らしい役回り。
アンディ・ガルシアも今回は12よりもずっと生きていて素敵♡
今までで一番いいかもしれない~!
(実は私にはそこがツボだったりする)

ミシュランの星評価の隠れ審査員を模したダイヤモンド審査員がこれでもかという具合に散々な目にあわされて笑える。
それでも嫌味にならない品の良さがあり、最後まで丁寧に作られている点が好感を持てた。


しかし映画として満点を挙げられないのは、この作品を単独で観た場合、面白いのか?という点にある。

人物の設定や関係性が見事なまでにばっさり省略されているのだ。
オーシャンズ11を見ていないといけない。のみならず、オーシャンズ12も見ていないと、これは誰??となる作りになっているのだ。
トゥルアーなんて唐突に現れ、何カッコつけて飛んでるんだろう?としか思えないだろうし、テリーに資金依頼に行くという「大胆さ」も通じないだろうし、そもそもルーベンが倒れたからといって仲間が結集する意味がわからないだろう。
ライナスのあいかわらずのお子様キャラもこの作品だけみたのでは、浮いて見えるだけかもしれない。

だからこの映画を観る時は、先にオーシャンズ11、12を「続けて」みておきたい。
そこが残念な点だし、公開時に興行成績があまりよくなかった原因だろう。
でも作品としては3作中で一番レベルが高い作品だと私は思う。
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