高橋早苗

コールド・フィーバーの高橋早苗のレビュー・感想・評価

コールド・フィーバー(1995年製作の映画)
3.6
仕事は順調
正月はハワイと決めてた男
祖父から両親の供養を勧められる

7年前、アイスランドで亡くなった、父と母。
「冗談じゃない
 やっとこの寒い東京から抜け出せるんだよ」
と祖父には冷たく言い放ったのに
なぜか上司へ
一週間の休暇延長を申し出る


アイスランド
・・・スクリーンは
東京の狭苦しさから一転
見渡す限りの雪と氷の世界に変わる

ブルー・ラグーンでのんびり温泉につかる観光客たちを尻目に
タクシーでまずレイキャビクを目指すが
道中は何やら不可思議なことだらけ


客を乗せてるのに
「ちょっと用を…」とタクシーを降り
待てど暮らせど戻って来ないタクシー運転手


雪と風の中をひとり歩いているとトラックに拾われる
荷台には大勢の男達が立ち乗りしていて
賛美歌を合唱してる


やっとホテルにたどり着けば
怪しい女に車を売りつけられる
海のそばで凍り付いてる中古のシトロエン
ドアノブは取れ
一度鳴り出したラジオは 止められない


葬式収集家の女を乗せれば
当然(?)知らない家族の葬式に参列させられ
墓堀男のひとり言を聞き
何故か写真まで撮られる羽目に


途中動かなくなる車で
寒くひもじく 一夜を明かす


耳をつんざく奇声?を発する
少女を見る
その声を合図に エンジンがかかるシトロエン


途中で拾ったアメリカ人のヒッチハイカー二人は
突然強盗に化け 車は奪われ
分かれ道で放り出される


途中 何度となく聞かれる
「アイスランドはどうだ?」
彼は 何度となく答える
「わけがわからない」


…わけがわからないまま
極北カウボーイの街で 羊コンテストの席
ある老人と出会い 彼を頼りに
両親が亡くなった川を目指す
「オレはハワイに行きたいんだよ」
と言いながら


…導かれるというのは
こういうのをいうのね

ハワイに行きたいと言いながら
雪のアイスランドを淡々と旅していく男の姿は

父と母の辿った道を辿り行く
子どものようにも見えてくるから不思議


ひとたび街を離れれば
荒涼とした
雪と山と風と氷と
蒸気を吹き上げる炎の世界


目的の地へ ガイドする老人が言う
「日本もアイスランドも 島国
 火山や 湯の流れる川がある
 死ぬと 体は冷たくなるので
 霊魂だけは 地上で暖まってるのさ」


霊魂だけは、地上で暖まってるのさ

彼の
「生きてる間に、親父とお袋に何もしてやれなかった」
という想いの温かさは
アイスランドの地の“温かさ”と
同じなのかも。


地吹雪ばかりが目につく景色だけど、ちっとも寒々しさを感じない
そんなロードムービー

…実際は、まぁ結構寒いんだろうと思いますけど(^^;
高橋早苗

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