すきま

アルファヴィルのすきまのレビュー・感想・評価

アルファヴィル(1965年製作の映画)
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数年ぶり二度目の鑑賞。前回は、女性の扱いのひどさ(そういうディストピアの設定なので)が我慢しきれず、落ち着いて細部を観られなかった。
今回は、ディストピア側のストレートなディストピアぶりに対し、自由理想主義社会側の主人公の平然と人々を処分するサイコ・キラー的様相を、興味深く味わった。どちらの社会も、女性の扱いがひどいおじさん達により運営されているようだ。
劇場で大量処刑するのは、シャワー室で裸にならせて毒ガス死させるよりは人間的か、どっちもどっちなのか。
芸術が真っ先に消されると設定しているのは、史実から見ると誤りで、毎度都合よく利用され(それに殆どの者は抗えない)だけだろう。全てが終わった後には、完全に無垢な犠牲者であるかのように振舞う民衆から、盛大に非難される。
頭脳コンピュータを表わす博士の声の、いい声のような絶妙に気持ち悪いようなスロウぶりが良かった。
辞書から言葉が消されていくのは『一九八四年』からの引用と思われる。同モチーフを独自のトーンで描いている、小川洋子の『密やかな結晶』を読み返したくなった。
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