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ブルース・ブラザースのkuuのレビュー・感想・評価

ブルース・ブラザース(1980年製作の映画)
4.0
『ブルース・ブラザース』
原題 The Blues Brothers
製作年 1980年。上映時間 133分。
アメリカのコメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』でジョン・ベルーシ&ダン・エイクロイドが演じた人気キャラクターを映画化し、黒いハットにサングラス、黒いスーツを身にまとったブルース・ブラザーズが巻き起こす騒動を、笑いとアクション、歌と踊りを散りばめながら描いた傑作コメディ。
ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、アレサ・フランクリン(彼女の映画デビュー作)ら豪華ミュージシャンがゲスト出演。
チャカ・カーンもトリプルロック教会の聖歌隊にいた(カメオ)。
1998年には続編『ブルース・ブラザース2000』が製作された。

刑務所から出所したジェイクは迎えに来た弟分エルウッドとともに、かつて世話になった孤児院を訪れる。
母親代わりのシスターから孤児院が経営難に陥っていると聞いた彼らは、金を稼いで孤児院を救うことを決意。
かつて仲間たちと組んでいたバンドを再結成してコンサートで一獲千金を目指すが、その途中で警察から追われる身となり、さらに謎の女からも命を狙われてしまう。。。

ジェイクとエルウッドは、スクリーンに登場するキャラの中でも滑稽でイカれた2人であり、ジョン・ベルーシ&ダン・エイクロイドベルーシが演じるために生まれてきたような役と云える。
“ジョリエット”・ジェイク・ブルースは皮肉屋で、軽口を叩き、完全無欠のくよかな体型でダンスを踊る、愛らしいさまが印象的。
一方エルウッド・ブルースは対称的な細身体形で、クールな佇まいながらも時折見せるトボけた表情が魅力的。
真面目だがどんな状況でも冷静。
この2人の魅力は、出会ったこともないようなお調子者の兄弟であると同時に、救いようのないペテン師でもあるということ(失礼)。
嘘の住所を教えたり、パトカーを妨害したりと、ありとあらゆる手口を使う。
そしてこの野郎たちは、まさに『いけ図図しい』の定義そのもの。
彼らは実際に、ボブのカントリー・バンカーで予定されているカントリー・ウエスタン・バンドになりすますことに成功している。
そして、ジェイクが別れたはずの花嫁(キャリー・フィッシャー)に直面したとき、彼の情けない云い訳の数々は信じがたいもの笑。

他のキャストも素晴らしく、レイズ・チャールズ(レイ楽器店の盲目の店主)、アレサ・フランクリン(マットの妻で “ギター” マーフィと共にシカゴの下町でソウルフード・レストランを運営)、ジェームス・ブラウン(クリオウファス・ジェームズ牧師役)、そしてキャブ・キャロウェイ(孤児院の管理人)までもが、伝道師や中古楽器のセールスマンなどとして登場する。
そして、もちろん、彼らは歌う。
『Respect』、『Shake Your Tail Feathers』、『Minnie the Moocher』など、彼らのナンバーは実に壮大で、思わずつま先をタップして口ずさんでしまいそうになる(リズム音痴ながら)。
ジョン・キャンディは不器用でいい人なバートン・マーサー刑事役を好演し、ツイッギーは昔の間抜けな金髪のしゃれでほのかにオモロいが、最高のキャスティングは、ジェイクのサイコな元恋人役のキャリー・フィッシャーかな。
彼女はサイコ・キラー・タイプではなく、そうであればジョークは成立しないが、彼女の『スター・ウォーズ』を観れば、銃の扱い方を熟知していることがわかるので、このキャラは信じられる。

今作品のもうひとつの強みは、何にでもユーモアを見出せるとこ。
脚本を書いたアクロイドとランディスは、ジェイクが刑務所から出所したり、エルウッドがシェービングクリーム工場の仕事を辞めたりするような平凡な状況にコメディを注入することに成功してると思います。
オモロいシーンのひとつは、兄弟がペンギンと会う場面で、普通、主人公たちを育ててくれた修道女との面会は厳粛に扱われるもの。
しかし、ここでは、雪だるま式にドタバタ喜劇が繰り広げられる。

また、多くの批評家が不可能だと考えてきたことにも成功してる。
実際に笑えるカーチェイスがある。
この場面に時間をかけすぎは否めないし、高速で追いかけっこをする車を見ても、特にユーモラスなところはない。
ユーモアは登場人物の反応から生まれるもので、ジェイクとエルウッドが突っ切る店について無関心なコメントをしたり、キャンディがセミ・トラックの側面に体を埋め込んだ後の貴重なセリフを云ったりする。
製作者たちは、ナチスのお偉いさんの顎を落とす突っ込みのように、不条理な誇張がもたらす喜劇的可能性も理解している。

しかし、『ブルース・ブラザース』の真骨頂は音楽。
先にも書いた、R&Bの伝説的なミュージシャンたちに加え、兄弟自身がサウンドトラックの多くを提供している。
ブルース・ブラザーズが実際にチャートのトップを飾ったバンドだったということを、現代の多くの人は知らないかもしれない。
彼らが演奏するウィルソン・ピケットの『Everybody Needs Somebody to Love』は、これまでにリリースされた曲の中で最もエネルギッシュで気持ちのいい曲のひとつかな。
メイン・コンサートの撮影のためにパレスホテルのボールルームに詰めかけた観客が本当にうらやましい。

どのように見ても、この映画は純粋に楽しい。
ハイエナジーの歌とダンス、物理学を超越した追跡劇、一発芸のような台詞の数々、どれをとっても巧みで面白い。
『ブルース・ブラザース』は最初から最後まで、愉快な笑いの渦に巻き込んでくれる。
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