みむさん

灰の記憶のみむさんのレビュー・感想・評価

灰の記憶(2001年製作の映画)
3.5
俳優としても活躍するティム・ブレイク・ネルソンの監督・脚本。

「死なないため」に同胞の死体を処理するアウシュヴィッツのソンダーコマンドたちの反乱と、彼らが一人の少女を救おうとする話。

劇中にも出てくるハンガリー系ユダヤ人医師ミクロス・ナイシュリの手記に基づくとのこと。
ナイシュリはあの恐るべき人体実験を行い「死の天使」と呼ばれたメンゲレに認められ処刑は免れたようだ。彼が見たソンダーコマンドの姿。

「サウルの息子」でも描かれたソンダーコマンド。彼らはその任務と引き換えに処刑を数ヶ月免れらわけだけど、結局は都合のいいように使われて殺される。彼らもそれを知っているけど仕方なくやるしかない。
ナチスに協力するのは信念に反するだろうが、彼らには反乱のためにも時間が必要だったということだろう。

ショッキングなシーンは多くないものの、死体の山が出てくるし、それを淡々と焼却炉に入れる姿も映される。

人間としての尊厳よりも、まず死なないことを優先せざるを得ない彼らたちの姿を見るのがしんどい。
生きていながら生きていないようで。
「もう昔の自分がわからなくなってしまった」の言葉が重い。

反乱を成功させ逃げることだけを考え、淡々と任務をこなしている中で遭遇した一人の少女。彼女との偶然の出会いが人間味をふたたびもたらすも、非情な結末が待っていた。

希望も救いもない映画、これが実際にあったことだと忘れてはいけない。