藻尾井逞育

星空の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

星空(2011年製作の映画)
4.0
「星空を見上げれば、世界はとても大きく広がっていくよ」
「13歳の私たちはとてももろく、だけどその実かなり強くもある。だから残酷な世界に直面するまでは、どうか優しく接して。多くは望まない。見つめる目、優しい言葉、降り注ぐ雨、吹き抜ける風、別れる時にはうなずいて。わずかな温かさでも心から幸せになれる」
「すべては過ぎ去っていく。だけど手を離すまでは、できるだけ強く握りしめよう」

素敵な美術品に囲まれた家に暮らす少女。しかし、美術商の両親は出張で家を留守にすることが多く、彼女はいつも孤独を感じていた。両親の離婚も秒読み状態となり、やさしいおじいちゃんも死んでしまった。ついに居場所がなくなってしまったと感じていた彼女は、スケッチブックを抱えてさまよう不思議な転校生の少年と出会う。ともに孤独を感じていた少女と少年は、この世でもっとも美しい星空を見るため一緒に家出をする。

台湾の国民的人気絵本作家ジミー・リャオのベストセラーを題材にしたファンタジー映画です。アニメーション処理された場面にもほっこりとした優しさを感じられました。両親の離婚や家庭内暴力など、まだ小さな子供にとって自分ではどうすることもできない問題ってありますよね。頑張って立ち振る舞ってみたものの、やはりどこか物足りない空虚な気持ち。ピースが一つ欠けたジグソーパズルが、この満たされない空虚な気持ちを象徴しているかのようです。お互いピースの欠けたもの同士、どこまでも広がる星空を求めることで欠けた部分を埋め合わせようとしていたのでしょうね。大人になってから、パリの街角で、どこか一つだけピースの欠けたジグソーパズルを飾っているお店でのシーン。グイ・ルンメイさんの驚きと嬉し涙の表情で、出迎えてくれたのが誰なのか、見ている人たちにうったえかけてきますね。とても優しい気持ちになれる映画です。

2024/04/03
台湾加油!