このレビューはネタバレを含みます
表面では紳士的に振る舞いアニーの隙を伺うポールと、歪な愛ゆえサイコなアニーのやりとりは冷ややかなサスペンスと暖かいロマンスの境界線を綱渡りでアンバランスに歩いているよう。ポールにとってそれはまさに命綱。
アニーは十字架を身につけている。バスター保安官は妻に何度か「皮肉屋」という。ポールはミザリーの身体は滅んだが精神は滅んじゃいないと呟くのに対しアニーはそんなの関係ねぇえ(小島よしお)と声を荒げる。
なんのことでしょう。
多義的に「救済」というのは一つこの映画のテーマっぽいものなのかもしれない。命の救済は皮肉な救済。演出と言葉との結びつきを発見するのは、映画の一つの楽しみです。その結びつきは映画を最後まで観たものだけの特権です。
あとは小説を仕上げ一本の煙草をうまそうに咥えるポールのシーンや、バスター保安官と妻がダブルベッドに横並び読書するシーンは最高でした。