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ミザリーのfumingのレビュー・感想・評価

ミザリー(1990年製作の映画)
4.3
大人気小説作家が狂気的なファンの手によって監禁されてしまう、サイコスリラーサスペンスの名作。緊張感と焦燥感が全編通して張り詰めており、我々視聴者は常にプレッシャーと歯がゆさを感じることになる。テンポ良く、且つスリリング。観ていて退屈させられるような場面は殆ど無く、純粋に映画としての高い出来を誇る。映画があまり好きでは無い人、長時間観るのが苦手な人にもオススメする作品だ。
スティーブンキング作品の魅力は、日常に潜む恐怖とフィクションなのに現実にも起こり得そうなリアリティであろう。この作品も単純な怪奇では終わらず、誰の身にも起こりうる可能性を取り扱っている。ヒロイン(?)のアニーも怪物ではなく、狂ってるのに狂ってない、恐ろしいのに優しい、献身的なのに自己中心、と飴と鞭とでも言うべき二面性が妙に迫真でおぞましさを煽る。彼女の役者は本当に見事な演技だ。
また、本作は「書きたいものをファンに否定された作家」と「読みたいものを作家に書いてもらえなかったファン」の対立構造に成り立っているが、ここにキング自身の皮肉が込められているのではないだろうか。キングは言わずと知れた大人気作家であり、伴ってファンも増えていったものの、故に自身の作品に固定イメージを持たれたり新しい作風やテーマに挑戦し難くなった苦悩と葛藤がワークライフのどこかであっただろう。本作は、そんな彼の
「俺の書きたいものを書くんだ。文句言うな」
「人気者になるのも困ったものだな」
という、芸術と商業の間にあるジレンマを表したメッセージを含ませたいたのではないだろうか。そしてまた我々視聴者も主人公同様、誰かに愛されすぎるのは困ったことなのかもしれない。
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