映画好きの柴犬

太陽を盗んだ男の映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.0
今の時代にリメイクしたら、この味は出せるだろうか?

 盗んだプルトニウムで原爆を作り政府を脅迫する中学教師城戸(沢田研二)と、対峙する警察・山下警部(菅原文太)との駆け引きを描く、社会派サスペンスアクション。

 子供の頃に、ジュリーが教壇に立っているシーンをテレビで見たことを微かに覚えているだけだったが、これは面白い!この頃の作品を今見ると、設定のゆるさや演出の古さがノイズになりがちだけど、本作はシニカルな社会風刺コメディなので、そういったところが全部味になってて、古さを感じさせない。

 逆に、70年代後半の猥雑さや閉塞感といった空気感が、ビシビシと伝わってくる。この閉塞感、そして原爆というキーアイテムが、3.11後の日本に妙にリンクしているように思えてならない。まあ、猥雑さはすっかり失われてしまったけど。

 今なら考えられないゲリラ撮影やカーアクションもなかなか。沢田研二のつかみどころのなさがいい。今なら、理解不能なサイコ野郎として描かれがちなキャラを、ある意味普通の人として設定しているところがいい。相対する菅原文太の無骨さもいいし、そして池上季実子の美しさにびっくり。