ダイナ

太陽を盗んだ男のダイナのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.7
中学校理科教師が個人で原爆を制作し政府を脅迫する1979年公開クライムアクション邦画。鑑賞後は放心状態。とんでもない映画を観てしまいました。昔の邦画はこんなことをやっていたのか…。

沢田研二演じる理科教師が原子力発電所からプルトニウムを盗み原爆を作成、それを手に日本政府を脅迫する。交渉に乗じる警部を演じるのは菅原文太。無茶な要求で政府を翻弄するテロリストと特定に急ぐ警察の闘いが映されます。

147分とやや長尺ですが、時間が気にならないくらいテンポが良く、そして扱っているテーマに反してエンターテイメントを心掛けた展開で夢中に鑑賞できます。自宅での原爆作成のシーンなんかは、おじさんが料理配信をしているのを見ている様な感覚でとても面白いです。沢田研二・菅原文太の演技も素晴らしく、政府への要求、警察との攻防戦での出し抜き方や言葉使いであったりと独特なセンスも面白いです。テロリストが自分のニックネームについて、「現在世界で核爆弾を保有している国は8つ。俺はその9番目だから名前は9番」というセンスが最高!

原爆の取扱いシーンのとある場面については、本当に公開して大丈夫なのかと何故か自分がハラハラしてしまうような、「観てはいけないもの」を観た衝撃を受けました。そしてカーアクションや街中でのゲリラ撮影の臨場感も凄く、最近のコンプラシーンでは縛られそうな映像にも圧倒されます。

テロを肯定的に描いているものでなく、テンポの良さや軽い面白さと同時にシリアスで救いようのない残酷さも映している本作。とにかく熱がすごい!グロテスク・暴力的な過激さとは違った、「人間の行動の過激さ」というものがギラギラと映されている本作は問題作であり傑作です。

余談ですが今年の頭に監督にインタビューした記事を見つけまして、本作で言いたかったことや次回作の意欲について語られていましてとても興味深いものでした。興味のある方は是非。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/152936/1
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