フクロウ

太陽を盗んだ男のフクロウのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.9
間違いなく今年一番の当たり、これまででも3本指に入る映画だった。興奮しすぎて暫くしないとまともに評価できない。

最後の屋上で対話に学生運動時の三島由紀夫が重なった。

物理教師が原爆を作るという突拍子もない設定が軸にあるのに、それ以外の全てにリアリティがあって良く入り込める。
人物の振る舞いや喋り方が何処かだらしなくて人間味に溢れていて魅力的。
それぞれのシーンも誰がどう動くのか予想できなくてワクワクするし、飾らない妙なオシャレさがあった。ビルを支えるシーンと女を海に投げるシーン、ナイター放送を延長させるシーンが印象的だった。

主人公の教師の原動力は冒頭の事件に対する漠然とした行き場のない憤りなのだろうけど、それとは別にできそうだからやってみたいとでも言いたげな楽観がある。先が無く、思いつきで動く刹那的な主人公の悲壮感と楽観のバランスが、突き動かされる人間味を醸し出していて少しだけ共感させられた。

これだけの話をどう畳むのか心配だったけど、自分が考えていた限り一番いい終わりだったと思う。博士の異常な愛情と同じ、神妙な問題提起をしておきながら急に手のひらを返しての笑い話とでも言いたげな最後だった。

何よりタイトルが良い。