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メメントのrensaurusのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.6
ある時点から数分程しか新しい記憶が残らないことを利用した、時系列を逆行するサスペンスの斬新さに魅入っていたら、「記憶」や「記録」の曖昧さ、それらは全て自らの願望や意志で書き換えられてしまうという潜在意識の恐ろしさが浮かび上がってくるような作品になっており、構造やアイデアだけでなくメッセージ性も帯びた中身のある内容だった。

主人公は真実を追っているように見えて実は真実から目を背け、逃避を続けている孤独な男であり、迷走の物語が続いていくということが分かるエンドになっており、真実や現実から目を背けてしまう人間の病理を描いた作品としても見応えのあるものだった。

劇中の登場人物に、改めて考えてみると明らかにおかしい挙動や、矛盾的な言動が見られたり、確かな情報が一握りしかなく、観客としても何一つ真実らしい真実は得られないという徒労感などが残るようなストーリーになっているが、この作品の本質はそこではなく、主人公の不毛な逃避行と、それにつながる潜在意識や病理こそに深い感慨を受ける。サウンドトラックも作品にピッタリで、特有の夢想感漂う雰囲気が作り出されている。
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