となりの

メメントのとなりののレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.5
2回目だけどやはり面白かった。

冒頭の逆再生のショットが予告するように、次第に事の発端へと遡っていく構成が、エンタメとして分かりやすく上手い。
これから何が起こるのかではなく、何が起こったのかを問うことが、ヌーヴェルの基本的手法であると言うが、本作はまさにそれだろう。

とりわけ、段々と時間を遡るシーケンスがサスペンスを盛り立てていくなか、サイドストーリー的だったモノクロのシーケンスが事の真相に近付いているのだと分かってからのカタルシスはすごい。
その二つの系列が合流する場面は、のちの『TENET』を思わせるところもあり、その巧みさには舌を巻く。

それから、本作のテーマは、「条件」や「条件づける」ことなのだろう。
記憶がリセットされるなかで、その行動を組み立てる条件を書き込む。身体的な習慣づけとタトゥーによる書き込みを並べるのはきわめてよくできている。そして、その条件に従うことで、自らの物語を(予期せぬかたちで)紡ぎ出す。
妻も、悪徳警官も、結局は自分のストーリーに主人公を取り込もうとするわけだから、自分自身で作話することは防衛と抵抗なのだろう。

大きな物語を生きることのできない、短期的で断片的な条件を書き込まれた身体による抵抗、なるほどそれはよく分かる。
ただ、それでも時間は単線的であり、結局、物語は最初と最後で円環を作ってしまう。
サスペンスを描く手法の目新しさに対して、この時間の構成については、もっとやれたのでないかと思ってしまう。
その点で、しばしば挿入される妻の回想のショットは興味深かった(が、まだよく分からないところでもあった)。
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