CHICORITA主任

メメントのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.3
2001年に公開されたノーラン監督の長編第2作が、『オッペンハイマー』のアカデミー賞受賞を記念して再公開。併せて再公開された『フォロウィング』もあり春のノーラン祭り開催といった趣です。

妻殺しの事件によるケガの後遺症から、新しい記憶を10分間しか保てない男が、復讐のために犯人を追い求める様が、数分ごとの記憶を遡っていくように、時系列が逆さまに描かれていくミステリー・スリラー作品。

『TENET』における時間の逆行や、最新作『オッペンハイマー』における異なる時間軸をカラー・白黒で描き分け交互にカットを繋いで進行する構成など、のちの数々のノーラン作品の構成や演出の原型が見て取れる、まさに原点といえる一本でした。
記憶というもののあやふやさと、しかしそれが個人のアイデンティティと密接に結びついている点を描いた作品テーマは、『インセプション』にもつながる問題意識とも考えられますね。

映画の構造とテーマが一致した構成は、前作『フォロウィング』と比較して、数年の差ながら格段の進化が感じられます。

劇場の大スクリーンでノーラン作品の進歩の歴史を追う貴重な機会。ファンならすべからく観るべし。
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