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メメントのtkのネタバレレビュー・内容・結末

メメント(2000年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

永い時間を連続して認識できるのは人間の能力であり特権だと、どこかで聞いた。
そうやって経験を積み重ねることで、人は進化し成長する、らしい。
だけど本当にそうだろうか?
瞬間に生きる人間は獣なのだろうか。
どこかのジャングルに棲む部族は、ただ目の前の今を生きているという。
昼、夜の別もなく、空腹になれば夜中でも漁に行き、生活しているそうな。
何だかそれはそれで幸せな気もする。
今作のレナードは幸せなのか?と思った。
ただ、人生はあくまで主観(じゃないかと思う)
側から見れば哀れでも、目的のある人生は幸せかもしれないし、どこまで行っても〜だろうなと“思う”ことしかできない。
「我想う、ゆえに我あり」
そんな自らの想いだけは確かだ、というほかない寄る辺のなさ。
クリストファー・ノーラン初期の作品ながら完成された語り口と、時間逆行のサスペンス。
ただ単に完成した脚本をぶつ切りにしたレベルではない、徐々に明らかになるファクトと深まる謎。
それを過不足なく、観客が理解できる難易度で描くのが氏の天才たる所以だろう。
主人公が求める真実の如何だけでなく、幸せとか生きる目的とか色々と考えさせられて深淵に突き落とされた気分。
キャリー=アン・モスの美しさ、ガイ・ピアースの精悍さに見惚れてしまうのは序盤。
物語を遡るにつれて徐々に本当の姿が表れて面白いが、辛い真実や人の醜さ、愚かしさを知ることになる。
彼女が出演したマトリックスのテーマとも重なって感慨深い。
赤い錠剤と青い錠剤。どちらを選ぶのか。
真実を受け入れ現実と闘うか、また微睡のなかに堕ちるのか。
ジョジョ6部でも主人公のエピソードに引用されているのが印象的な今作。
徐倫もメモを使うが、ラストの解決方法がまた違っていて面白い。
初見の時は意味も分からず、解説を読んで納得したが、そんな記憶も曖昧な中、久々の鑑賞が劇場でできて心揺さぶられた。
非常にハードボイルドな傑作。
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