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メメントのNMのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
3.2
冒頭、男を撃ち殺すシーン。
その後、その少し前から殺すまでのシーン。
このような、レニーが思う真実、実際に起きたこと、モノクロの過去、が細かく繰り返される。

観客は知ったけど本人は知らないままの事実もあれば、
両方知らない事実もある。
実際の映像なのか、本人の幻想なのか、見分けるのは困難。
明らかに過去であるシーンはモノクロになるものもあるが、それさえも事実かどうかは不明。
ずっと、ああではないかこうではないかと推理しながら観ることになる。

記憶と現実と妄想を、時間もバラバラにして切り刻んで、あべこべに並べ替えたような作品。
大勢で一緒に観てその後答え合わせをしたら、みんな違うことを言いそう。

あの汚ないジャガーがずっと不自然に目に付くが、それが最後にすっきりした。
とは言え、まんまともう一度最初から再生してしまった。
すると、メビウスの環のように、そのまま完全に繋がるように作られていることが分かる。台詞もそのまま繋がる。

記憶は変わりもするし作り出すこともできる
記憶は確実でない、
とは本人がはじめに言っていたこと。
「おれは人が読める」、(サミーとは違って)要領が良く、習慣を身につけてあり、やる気がある、と語る。
自分に驕りがあり過ぎることが真実にたどり着けない一因。挙げた一例は「鼻を掻く」というしょうもないもの。
おれは大丈夫なんだ、と言い聞かせないと生きていけないのだろう。

集めた資料のページ抜けや黒塗りにもっと疑問を持つべきだった。

解釈は様々あるだろうが、本人の意思説はあり得ると思う。レニーはこの作品内だけでもなんだかんだ結構な数の人をぶちのめしている。カッとなりやすいのは間違いない。

記憶喪失系謎解きものは、決定的な証拠ではなく、漠然としたメモしか残さないのは鉄則。
メモの方が確実、記憶の方が曖昧だ、警察だってメモを残す、と言いつつ、残すのは見事なまでに役に立たないもの。しかもそれをわざわざ体に彫るとは本当にfreaky。腹にある「EAT」って何なんだ。テディ曰く、彼は態と詳細なメモを残さず、証拠を処分したようだが。首から下げているレコーダーらしきものも、専ら武器として活躍しただけだった。
メモというのは意外と難しく、量ではなく質が大事だと良く分かる。ヒントにならず余計混乱するような、格言みたいなものばかり残す。関わっている人は限られていて、善意の後見人はいないか、いても信用できず、悪意の人に付け入られ、本人は今目の前にいる人が信用できそうか当てずっぽうで判断することになる。その悪人らはお互いをあいつこそ悪者だと吹き込む。
一度嘘を信じてしまい記録に残すと、ずっと騙され続けることになる。ナタリーが生き残ったのも、先に信用を得て記録させたのが勝因。後から例え真実を言っても、記録が勝つ。それといつでも初対面状態であるレニーにとって、ぱっと見では悪人と思えないことも利用した。

ただこれは、程度の差こそあれ、ほとんどの人が無意識にしていることだと思う。
私自身、過去にこの作品を観たのに、内容をほぼ忘れていた。ナタリーにムカついたことしか覚えていない。レニーをバカにはできない。

ドッドは、追いかけ回していた相手が自分の部屋でシャワーを浴びていてさぞびっくりしただろう。

原作短篇も読んでみたい。

テディ役パントリアーノの演技が秀逸。彼のこの作品への貢献度は大きい。
犯人と言われればそうも見えるし、刑事と言われればそうも見えてしまう凄い演技力。それでこそ俳優だなと思える。こんな作品には特にうってつけ。例え真実を言っても嘘に聞こえそうな、どっちとも取れる不思議な雰囲気。
登場シーンも強烈。あの顔、最高である。最後まで観ると、なぜあんなに飛び込んできたのか、なぜあんなにスマイルだったのかが分かる。

ピアースが、白っぽいスーツを着ると特に、伸び代ですね!と言いそうに見えた。金髪だし。

メモ。
なんか声に出したい英語(ヒアリングが間違っていなければ)
「That’s who you were. You do not know who you are.」
「On the house.」
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