カニパン食べたい

メメントのカニパン食べたいのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.0
結果から見せられていくというスタイルと10分だけの記憶という設定が活かしに活かされまくって、よくこんなシナリオ書けたな!とお口あんぐりしながら、記憶のあやふやさを一緒に体験。出来事や人物の印象が物語が『さかのぼるにつれて』書き換えられていくというのが面白くって目が離せず。主演の顔がかっこよすぎて目が離せなかったというのもある。
けど、劇場向けじゃないよな。リピーターはいいけど初見では情報整理がおっつかないかも。巻き戻し巻き戻ししながら観ちゃった。

以下、ネタバレ

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言動も見た目も「こういう奴知ってる」と思わせる、いかにも信用できない男のテディ。実際私は身の回りにいるこの手の輩の顔を思い浮かべながら観ていたわけですが(そういう意味ではテディ役の演技うまい)そして実際彼はたしかに信用できないクズなのですが、結果的には彼が語った事が最も真実であり、かつ主人公に最も協力していた人物であったという。

とはいっても、小さい嘘だらけだし記憶障害の主人公を利用しているし、台詞からは映画で描写された以外にも殺しをさせていたっぽいこともうかがい知れる(彼曰くウインウインだそうだけど)。

ナタリーは、どうやら主人公と似た傷を持つ『協力者』で。
最初の彼女の態度って、いい仲になったのにそれをさっぱり忘れている主人公に対して「頭では理解できているけどいい気はしないわ」っていう当てつけなのかなって思っていたら違った。彼女、主人公に恋人を殺されていた。そりゃあ、おめでたいやつだなお前は!とイヤミのひとつも言いたくなるよね。

主人公がナタリーに「永遠にベッドの隣に戻ってこない妻」・・・なんて話をしたけど、ナタリーにも、目が覚めて隣に誰もいない事を噛みしめるような描写があった。
「私はあなたと同じよ」みたいな台詞を幾度も言うのだけど、あれはそういうことだったのか。ナタリーは主人公を利用したと同時に復讐もしたのかな。

そしてホテルのフロントマンですらいいやつかと思いきや。
この映画、俯瞰して観れば、嘘、裏切り、利用と搾取。そんなのばっか。だけど主人公も観客も気がつけない。

誰よりも主人公が一番ひどかった。
真実と罪悪感から逃げるために、他人を利用する殺人も犯す、彼に最も大きな嘘をついていたのは、騙していたのは、裏切っていたのは、彼自身であったというお話。

最後に、モノクロシーンの電話は『主人公にとって最も不都合なこと』の象徴なのではないかな?
電話の相手は、たとえば、精神病院のカウンセラーだったり警察(テディではない)だったり。

妻を殺したのは自分であるという事実から逃げ続けるために、サミーという人物を作り出し、すでに殺したジョン・Gを追い続ける。ところがサミーは自分であり、ジョン・Gはどこにもいない。
それを知る事が彼にとって何よりも不都合なことだから、体に電話に出るなと書いたのかな。