ちゅう

メメントのちゅうのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
3.9
今僕が抱えている過去の記憶は本当に客観的な事実だったんだろうか...


TENETの公開を前にクリストファーノーランの作品を観ようと思い、先週インターステーラーで大いに感動したので引き続き鑑賞しました。
インターステラーについてはグランドシネマサンシャインのIMAXレーザーGTで観たんですけど圧巻でしたね。
最近フォロワーさんのレビューでIMAXレーザーGTのスクリーンが今までの映画のアスペクト比とだいぶ違うことを知ったんですが、上下方向が拡がって大スクリーンいっぱいに拡がる映像は吸い込まれるような感覚で、こんな体感は映画ではほとんど味わったことがなかったです。
クリストファーノーランはこのアスペクト比を多用するようなので、TENETもグランドシネマサンシャインで観たいなあと思ってます。


メメント、初めて観たんですけどこの時点ですでにクリストファーノーランの特徴が存分にでてるような気がしました。
一回の視聴では分かりにくいほどの複雑な時系列、自分をとりまく世界に対する認識とその受容、愛が人を突き動かすもっとも強力なものであること。
三つとも僕が興味を惹かれるテーマで、だからクリストファーノーランを好きなんだろうと今作で自覚しました。


ある事件がきっかけで短期記憶を保持できなくなった男が主人公なんですけど、プロットが現在から過去に遡っていく形をとっているから、彼が過去に何をしたかが観ている僕たちも彼と同様にわからないんですよ。
そこに共感とサスペンスが生まれて物語に惹き込まれていくんですけど、時間が遡るだけでもわかりづらいのにその遡っていく時系列とは別の時系列のプロットがさらに挟みこまれるから、かなり理解しづらい作りだと思います。

また、短期記憶が保持できなくなったものだから、彼の世界は空白の時間で埋め尽くされているんです。
自分が持っているものについて問われても、わからないから想像で答えてしまう(あとででたらめなことを言っていたのだとわかる)。
自分が何者なんだかわからなくなってしまっている。
そうなると自分をとりまく世界も信じられないものとなってしまう。

でも、そんな彼が善かれ悪しかれ行動をやめないのは愛に突き動かされるからで、信じられるものはそれだけなんですよ。
記憶がなくなって全てが空白に帰しても、愛のためにやった行動には意味があると信じていて、だからこそこの世界があることをそのまま受容しているんです。
それがいかに独善的であろうと愛が彼を生かしているんです。


言葉にしてしまうとありきたりなテーマにも思えることを、豊富なアイデアで腑に落ちる体験をさせてくれるクリストファーノーランはすごい才能だとあらためて思いました。
これからも新作が出るたびに追い続けるだろうなと確信してしましました笑
ちゅう

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