【第37回LA映画批評家協会賞 長編ドキュメンタリー映画賞受賞】
『フィツカラルド』などのドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォークが世界遺産ショーヴェ洞窟を映したドキュメンタリー。LAだけでなくNYやワシントンDCなどのドキュメンタリー映画賞を受賞、放送映画批評家協会賞にもノミネートされたがアカデミー賞では外れてしまった。
同じくフランスのラスコー洞窟壁画(一万五千年前)が有名だが、ショーヴェ洞窟壁画(三万二千年前)はその二倍も古いものだという。
知的好奇心を刺激される記録映画。普段は閉鎖されているショーヴェ洞窟の中で撮影しているというだけでも貴重だが、それに加えて学者たちによる様々な視点からの分析が聞ける。考古学、人類学、音楽学、美術史学・・・
特に印象に残ったのは身体が女性で頭が動物の壁画、そして長く正体不明だった古代の笛。
身体が人間で頭が動物というのはギリシャやインドの神話にもみられるが、大抵は男性神のように思う。女性というのは珍しく感じた。
笛は音が出るように縦に割り空洞をつくり、再びくっつけたことが示される。かなりしっかりとくっついており、古代の技術力に感心した。壁画だけでなく音楽からもその時代に迫るアプローチが素晴らしい。
様々な角度からショーヴェ洞窟壁画が描かれた時代に迫り、最後に映される壁画は最初の何倍も奥行きが感じられるようになる。非常に知的で興味深い記録映画だった。流石ヘルツォーク。