爆裂BOX

ファントムの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

ファントム(1998年製作の映画)
3.7
コロラド州の平和な田舎町スノーフィールドを訪れた美人姉妹のジェニーとリサはそこで、町の住民400人が姿を消したり悍ましい死体になっている姿を目撃する…というストーリー。
ディーン・クーンツが全盛期に発表したベストセラー小説「ファントム」を原作者自らが脚本を書いて映画化したSFサスペンスホラー。監督は「ハロウィン6/最後の戦い」のジョー・チャペルが務めています。
ハヤカワ文庫から出ている原作を読んでから見ましたがやはり原作と比べると物足りない部分がありますね。
物語は初めからテンポよく進んでいきますが、あまりにもテンポが良すぎて主人公たちの人物描写がイマイチ薄いです。主人公達が大して情報もないのに敵の習性や生態に詳しかったり弱点に気づくのもちょっとご都合主義に感じました。まあ、上下二巻の小説を90分足らずの上映時間に纏めたのでしょうが無いといえばしょうが無いんですがね。
特典のインタビューでも言ってるように原作とは結構設定が違っているので別物としてみた方がいいのでしょう。原作の主人公の相棒の黒人警部補とかイイキャラだったので出してほしかったですね。殺人鬼と暴走族は原作でもいる意味あんま感じられなかったからこちらは出さなくて良かったですね。
別物として見るとランニングタイムが短いのでとにかくテンポが良くダレる場面がありませんでした。前半の無人の街を主人公の姉妹と保安官達がさ迷う展開は家政婦や保安官の死体、伸ばし棒握った切断された手やレンジの中に入れられた生首と言った描写が不気味で緊張感がありますし、後半登場する怪物の造形も気持ち悪くてグーでした。犬に変化して背中がボコボコ波打って触手飛び出して防護服貫通させたり、終盤スチュの姿で現れて下半身ウニョウニョした触手になって迫って来たり、吹っ飛ばされた顔からイソギンチャクみたいな口です所等特殊効果とCG合わせて表現されていて見応えありました。
本作の敵である「太古の敵」は地底に潜み、殺して吸収した相手の記憶を読み取り、記憶に書き込まれていた姿には(対象が見た映画に出てきた物等)何にでも変身できるうえに殺した相手も操れるという最強の存在で、軍隊相手にその能力を如何なく発揮してましたね。自分を悪魔や神と思い込み、福音書を書かせて自分の存在を世界に知らしめようとする自己顕示欲の塊のような怪物でもあります。終盤でちょっとだけ出てくる「母体」もまさに「生きている混沌」という感じでちょっとクトゥルーっぽかった。
ジョアンナ・ゴーイングと「プラネット・テラー」でお馴染ローズ・マッゴーワンも雰囲気が似ていて姉妹という設定に違和感がありませんでした。マッゴーワンのちょっと生意気な妹キャラはあってました。原作よりも変態度が上がっている気がしたサイコパスっぽい保安官補スチュ役のリーヴ・シュレイバーもイイ味出していました。ベン・アフレックはあまり印象に残らなかったな(笑)主人公だけど(笑)でも、今じゃもうこういう映画には出ないだろうなぁ。そういう意味では貴重ですね。ピーター・オトゥールも防護服で走ったり、吹っ飛ばされたりと老体に鞭打って熱演してましたね。後、ブレイク前のロバート・ネッパーがチョイ役のFBI捜査官役で出てましたね。
原作ファンとしては物足りない所もありますが、B級ホラーとしては充分面白い作品だと思います。