映画おじいさん

花籠の歌の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

花籠の歌(1937年製作の映画)
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佐野周二が馴染みのカフェ女給とお喋りして田中絹代の嫉妬を買う甘味処シーンの終わり、ある客が店に入って来て田中絹代が「あっ!」と声をあげる。しかしその続きがない。ある客は映りさえしない。
終始こんなことばっかりで何だか短縮版のような感じさえ受ける中途半端ぶりにフラストレーション。

佐野周二と笠智衆が学生服着た同級生で一体君らはいくつなんだマジックでクラクラ。
「とんかつはミナトヤ、歯磨き粉はクラブ、てね」という佐野周二のタイアップ台詞が可愛らしい。当時の広告の宣伝文句をもじっているのかな。

とんかつ屋(ミナトヤ)主人は河村黎吉がいつも通りに。でも一番心に残るのは徳大寺伸が演じるコックさんの李さん(濁点の訛りからすると朝鮮人?)の軽〜い失恋。デコちゃんは全然目立たず。

上記した通り中途半端なエピソードの羅列でちっとも面白くない映画だけど、登場人物がみんなチャーミングで、古い邦画が好きな人がいかにも好みそうなムードがむんむん。今となってはそういうフィルムに焼き付いた空気を愉しむためだけの作品でしょう。そういう趣味のない私にはまったくダメな映画でしたけど。

河村黎吉の「これからはスキヤキだ! スキヤキで儲けてやる!」という最後の台詞は謎めいていてとても良かった。