うにたべたい

大怪獣映画 Gのうにたべたいのレビュー・感想・評価

大怪獣映画 G(2007年製作の映画)
4.1
多数の怪獣特撮で監督をしている田口清隆氏による自主制作映画。
監督、特技監督、企画、脚本、撮影に編集、効果等々、全て田口氏が担当していて、学生時代から8年の年月をかけて完成させたそうです。

PKOの海外派遣先でゲリラに遭い、仲間1人を見殺しにして助かった二人の自衛官「豪田」と「我羅衛門」。
彼らは、その経験を胸に、戦地の兵士が死なないための研究をしていました。
研究の結果、我羅衛門は、肉体を強化する薬を開発、実験として自らの肉体にその薬品を投与しますが、途端に肉体が変異、巨大化し、我羅衛門は大怪獣"ガラエモン"に姿を変えてしまう。
街で暴れだし、大勢の人々を犠牲にしながら進撃を続けるガラエモンに、豪田は、自らが作り出した特殊戦闘装甲車「ロボ」の出撃を提案するが、『攻撃を受けていないのにこちらから攻撃をすることはできない』と、出撃を却下されてしまう。
そうするうちに被害は広がり続け、豪田は静止の声を聞かずにロボの元へ駆け出す、という展開です。

低予算の自主制作映画ということもあり、怪獣が暴れているにも関わらずパニックになる人々がいなかったり、積極的な攻撃はしないまでも避難を誘導する自衛官の描写がなかったりなど、粗は感じました。
また、画質もそれほど良くなく、役者さんの演技も不自然を感じることがありますが、そこは仕方ない部分と思います。

それを補えるほど、特撮の質が高く、自主映画とは思えないほど怪獣の描写が素晴らしいです。
怪獣デザインも秀逸で、ジャングルの植物かなにかをモチーフにしているのでしょうか、オリジナリティーがある怪獣らしいデザインです。
この巨大怪獣が電車をなぎ倒し、マンションを倒壊させて、街を破壊しながら走り回る様は普通に驚異を感じました。
対する「ロボ」は、空き缶で作ったロボットのようなシンプルなデザインで、正直なところ、あまりかっこよさはないです。
ただ、空を飛び、ロケットパンチを放って怪獣と戦う姿は興奮しました。
そんじょそこらの商業怪獣映画なんかよりもよっぽど怪獣映画していて、視聴前はそれほど期待していなかったのですが、想像以上に怪獣でした。

基本的にストーリーは真面目で、中盤までは、頑なに武力で打って出ない自衛隊と、好き勝手暴れまわる怪獣、必死でロボの出撃を訴える豪田の描写が流れます。
展開はシリアスなのですが、度々小ボケが入ります。
怪獣とロボの戦闘なんて完全にプロレスで、電線をロープ代わりにラリアットを食らわせて「うぇーい」ってしたり、電車をヌンチャク代わりに振り回したり、特撮も怪獣も気合が入っているのに、気が抜けるところがあります。
また、登場キャラもいちいち濃くて、特に戦車隊の隊長がでかい声でくさいセリフを吐くシーンは印象深いです。
「武器の重さというのは、そいつが背負った宿命の重さだ」みたいなわけのわからないセリフをドヤ顔で放つあたりで作品の雰囲気台無しになりますが、そういう面も含めていい作品だったと思います。

ちなみに、DVD特典でメイキング映像が含まれていたのですが、公園で特撮映像撮影している場面が映ってて勉強になりました。
特撮ってこうやって取るんですね。